ヴィルトゥオーゾの追憶
黒岩航紀
発売日 2026/6/17
¥3,850(税込)
MECO-1091
SACDハイブリッド盤

商品紹介

アルティメイト・サウンド・シリーズ第5弾
鍵盤の魔術師、ここに降臨。火花を散らす鍵盤、唸る響板。
その壮絶なパッションと深いカンタービレを聴く。


東京藝術大学音楽学部を首席卒業後、同大学院、ハンガリーのリスト音楽院で研鑽を積み、国内外の数々のコンクールを制してきた鬼才、黒岩航紀が放つ初のヴィルトゥオーゾ名曲集です。聴くものを唖然とさせる超弩級のテクニックはもとより、その深いEspressivo とCantabile、深い楽曲解釈は数多あるピアノ独奏曲の中でも最難関と言われる各楽曲に新たな地平を拓きます。今ここにVirtuoso のワールド・スタンダードが誕生しました。


アルバムに寄せて - ヴィルトゥオーゾの追憶へ

このアルバムを残そうと決めたとき、私の心に最初に立ち上がった言葉は「追憶」であった。音楽は常に現在形で鳴るものである。しかし、鍵盤に触れた瞬間、過去の時間や感情が静かに呼び覚まされることがある。新しいアルバムを世に送り出すという行為は、未来へ向けた表明であると同時に、ある時点の自分自身を封じ込める、ひとつの記録である。

作品と向き合い、作曲家の思考に耳を澄まし、長い時間をかけて音楽を身体に染み込ませていく。その過程を経て、音楽は演奏というかたちで解き放たれる。その瞬間に立ち現れるのは、技術や構造だけではない。そこには、不安や高揚、迷い、そして確信といった、これまでに積み重ねてきた感情の層が確かに存在している。

本アルバムに収めた作品の中には、今の私の年齢の半分ほどの頃から取り組み続けてきたレパートリーも含まれている。環境も価値観も大きく変わり、経験を重ねた現在だからこそ見える音楽がある。一方で、若さゆえの無垢さや、勢いに身を委ねていた時期にしか生まれ得なかった輝きや煌めきも、演奏の奥底に息づいている。演奏家は常に更新され続ける存在であるべきだが、その更新は過去を否定することではない。未完成であったとしても、その瞬間にしか放たれなかった光は、現在の演奏を形作る重要な要素である。

本作は「ヴィルトゥオーゾ」という概念をひとつの軸としている。しかし、それは単なる技巧の誇示を意味するものではない。ここで扱われるヴィルトゥオーゾ性とは、技術、音響構築力、形式感、そして演奏における主体性が統合された結果として立ち現れるものである。選ばれた作品群は、私自身が長年にわたり舞台で演奏し、検証と修正を重ねてきた結晶であり、演奏人生の中で熟成されてきたレパートリーである。

プログラムを並べてみると、そこには明確な共通項が浮かび上がる。スクリャービン、バラキレフ、リスト、そしてパデレフスキ、ホロヴィッツ、レヴィツキ、ブゾーニ。いずれも優れた作・編曲家であると同時に、強烈な演奏的個性を備え、ピアノ・リサイタルの在り方そのものを更新してきた伝説的な存在である。彼らが体現した、楽譜の再現にとどまらない演奏美学は、リストから連なる系譜の中で、最終的な変容を遂げた姿とも言える。その精神を、現代において受け継ぎたいという意思が、私の中には確かにあるのだろう。

情報と資料が溢れる現代において、過去の巨人たちの足跡を辿ることは、かつてよりも容易になった。しかし、最終的に音を鳴らすのは、今この瞬間の私自身である。一人の職人として、研究の成果と、純粋なピアニストへの憧れを、この演奏の中に等しく刻み込んだ。本アルバムが、聴き手それぞれの記憶と静かに共鳴するものであるならば、これ以上の喜びはない。
黒岩航紀


収録曲

  • ① A. スクリャービン:幻想曲 ロ短調 作品28
  • ② A. スクリャービン:練習曲 嬰ハ短調 作品2-1
  • ③ M. バラキレフ:東洋風幻想曲 《イスラメイ》
  • ④ I. パデレフスキ:ミセラネア 作品16-2 変ト長調 《メロディー》
  • ⑤ V. ホロヴィッツ:ビゼーのカルメンの主題による変奏曲
  • ⑥ M. レヴィツキ:魅惑の妖精
  • ⑦ F. リスト/F. ブゾーニ:パガニーニ大練習曲 第3 番 嬰ト短調 《ラ・カンパネラ》
  • ⑧ F. リスト:パガニーニ大練習曲 第4 番 ホ長調 《アルペジオ》
  • ⑨ F. リスト:スペイン狂詩曲
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  • 黒岩航紀(ピアノ)
  • Koki Kuroiwa, Piano